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くろよん視察報告

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 11月にIEEIによる黒部ダム・黒部川第四発電所の視察会に参加したので、以下、視察報告を行う。

黒部ダム・黒部川第四発電所の概要

 富山県の黒部峡谷に位置する“くろよん”の愛称で呼ばれる黒部ダム・黒部川第四発電所は、戦後の復興期から高度経済成長期の関西地域における電力不足の解消、火主水従時代に向けた電力安定供給のための調整力確保を目的として昭和38年6月に完工した、186mという日本一の高さを誇る発電用ダムとその水力発電所(最大出力33.7万kW)である。現在も年間約10億kWhの再生可能エネルギー電気を生み出し、電気の安定供給と低炭素化を支える重要な電源である。

くろよん視察

 本視察会では関西電力のご厚意で、宇奈月温泉駅のトロッコ電車から、関西電力の工事専用軌道を経由する、所謂黒部ルートにて視察を行った。くろよんまでの道のりには吉村昭著の小説で知られる高熱隧道や、黒部川第三発電所建設時に泡雪崩によって飛ばされた宿舎が衝突したとされる奥鐘山の岩壁が見える展望スポットなどがあり、随行いただいた黒部川電気記念館の方による丁寧な解説も相まって、黒部峡谷における電源開発が如何に過酷なものであったのかということを実感できた。また、当日の黒部ダムは雪が降り積もっており、残念ながら安全上の理由でダム展望台から黒部ダムを見下ろすことはできなかったが、雪景色の中にたたずむ黒部ダムの壮大さに圧倒されるとともに、このような山奥の険しい渓谷の中に巨大な構築物を作った先人の挑戦と偉業に敬意を表せずには居られなかった。


黒部ダム(筆者撮影)

ダムの堆砂問題

 くろよんや黒部川水系における電源開発の歴史はもちろん印象深く、当時の苦労に思いを馳せずに居られないものであったが、それとは別に印象に残ったのは黒部ダムまでの途中にある他の黒部川水系のダムである。黒部川水系には最上流の黒部ダム以降、上流から仙人谷ダム、小屋平ダム、出し平ダム、宇奈月ダムの4つのダムがある。ダムの寿命は堆砂に大きく影響を受けるが、黒部川は全国的にも流出土砂が多く、戦前に建設された仙人谷ダム(1940年)と小屋平ダム(1936年)の堆砂率は既に90%を超えているという。そのため、その下流にある出し平ダム(1985年)と宇奈月ダム(2000年)には、排砂ゲートが設けられており、下流域への環境に配慮しながら定期的に排砂が行われているとのことであった。ダムや水力発電が開発時だけではなく、維持していくためにも自然と向き合い続けているということを改めて実感した。


堆砂により埋まった小屋平ダム上流(筆者撮影)

おわりに

 大規模水力発電所の多くは、CO2排出減を意図して開発されたものではないだろうが、今では再生可能エネルギー源として重要な役割を果たしている。特に太陽光発電や風力発電といった変動性の再生可能エネルギーが年々増加してきている中においては、くろよんのような調整力を持つ水力発電は電気の安定供給とカーボンニュートラル社会の実現を支える電源として今後益々その重要性は高まっていくであろう。新たな大規模な水力発電開発は難しいからこそ、今ある設備をしっかりと維持し、如何に後世につなげていくかということが重要であると感じさせられた見学であった。
 最後に、今回貴重な視察の機会をいただきました関西電力および当日最後まで引率・丁寧な説明をしていただいた黒部川電気記念館に深く感謝申し上げ、本報告の結びとしたい。